ゲストスピーカー

小林真記専任講師

09:45-10:15

第2言語学習者の協働学習:参与者の社会化と知識構築

Masaki Kobayashi

この講演の目的は、第2言語習得と社会性の獲得において学習者同士の相互行為が果たす役割の可能性について概観することです。まず、昨今増加しつつある、第2言語習得における学習者同士の協働についての研究に示唆を与えてきたヴィゴツキー派の社会文化理論と言語の社会化についての基本をたどります。それからカナダと日本の教育環境で行われた研究に基づき、個別には達成できないタスクの達成のために学習者がいかに協力したかを示します。いくつかの事例においては、グループの中に卓越した学習者がいなくても、互いの強さを使うことによって第2言語の知識を構築し、各自の能力を超えた課題を達成したことをデータが示しています。他の事例においては互いに言葉の使用を修正したり促したりしながら仲間の発話をより複雑なものへと構築する足場組を行ったりしています。これらの発見は、学習者同士の相互行為は学習者が社会化と知識構築の参与者となるという点において、学習に重要な文脈を提供するということを示唆します。最後に教師の学びとして学習者の相互行為を観察することの重要性を話します。

小林真記 はブリティッシュコロンビア大学大学院から言語とリテラシー教育の博士号を授与されており、現職は神田外語大学の専任講師です。神田外語大学では学部で応用言語学、第2言語習得理論、英語を教えつつ、理論と実践の架橋に関する研究・出版・論文査読など多岐の分野でご活躍であり、教員養成や研修のための講演のご経験も多数おありです。

マルコス・べネヴィデス専任講師

16:30-17:00

ゼロ番学習者を探して

Marcos Benevides

「ゼロ番患者」とは人々の間に最初のウィルスを持ち込む人です。その人はつねに感染症例の中心におり、感染の経緯と理由、及び感染阻止の方法について医者の理解を助けます。従って感染症学者は感染拡大の最中に、その「ゼロ番患者」の特定を、まず行おうとします。教育にも、この比喩を使えないでしょうか?何か教えたことに真っ先に反応する「ゼロ番学習者」について考え、彼らから何か学べないでしょうか?あなた自身が「ゼロ番学習者」だとしたらどうでしょうか?さまざまな言語をさまざまな状況で学習してきた経験をもとに、自身の今の言語教育へのアプローチに、そのような経験が良い意味でも悪い意味でもどのような影響を与えてきたかを話します。そして、そのような自己分析が、どんな教員研修よりも重要であると論じます。教室での教育研究を行うときにも新しい教授法やアプローチを学ぶときにも、自分の経験が、まず影響するからです。

Marcos Benevides は桜美林大学の英語学習プログラムの専任講師です。 Fiction in Action: Whodunit (ABAX, 2010) 、Widgets: A task-based course in practical English (Pearson, 2008)というユニークな教科書の著者であり、以下のブログでタスクベースアプローチを中心に.英語教育について連載しています。www.widgets-hq.com.

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